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乙女喫茶

拍手返信等は日常語りで。

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ガールズサイドのページ

名前はGS1が東雲アカリ・GS2が海野アカリ・GS3小波美奈子になってます。
多分。元が名前変換用小説だったので……すみません。

GS1




GS2
赤城一雪
看病(?)されてみる。
赤城くん好きな彼女へお見舞いのSS
2010.12.09


GS3
桜井琉夏
約束しようよ
これに関しては…なにも言うまい。
王子様なイタズラ天使
2010年ハロウィンネタです。

桜井琥一
クリスマスの子羊さん
2010年クリスマス。初の琥一くんSS、初書きがコレとか私の中の琥一像って一体…

設楽聖司
2012設楽先輩誕生日&バレンタイン
設楽先輩の誕生日とバレンタインに合わせて書いたもの。
題名まで考える余裕が無かった…

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2012設楽先輩誕生日&バレンタイン

「設楽先輩、遅いなぁ・・・」

 休日、待ち時間がとっくに過ぎても未だ姿を見せない設楽先輩を待ちながら、わたしは目の高さより大分高い時計を見上げてため息を吐いた。
 先輩が遅れて来るのはある意味恒例行事みたいなものだから正直あまり気にならない。
 それよりなによりわたしがさっきから気になってるのはここ、待ち合わせ場所である駅前広場の変わりようだ。

「だよね、もう2月なんだもんね」

 いつもはどちらかというと地味な駅前なのに、驚くほどわたしの周りはぐるっと一周、ピンクやハートのオブジェで埋め尽くされている。

─ああ、ヴァレンタインかぁ。

 頭の中で呟いてもう一つため息。そう、もうすぐヴァレンタインがやってくる。でもって、ヴァレンタインが近いってことは設楽先輩の誕生日も近いってことで。

「ああもう、どうしようっ」

 当然、ヴァレンタインチョコも誕生日プレゼントも両方渡すつもりではいるけれど
何を渡そうか、いつどのタイミングで渡そうか、なんてグダグダ悩んでいたらどんどんどんどん日にちが過ぎちゃって
気が付けば何も用意できないまま2月がきてた。

「チョコは手作りするとして、問題は誕生日プレゼントなんだよね」

 先輩はとてもお金持ちだ。欲しいものは何でも持っているし簡単に買えるだろう。
 だからお金をかけた豪華な品物より、自分の気持ちを精一杯込めたプレゼントをしたいって思う。
 無理して高いものを買ったとしても『庶民のクセに生意気な』って呆れられて終わっちゃう気がするし。

 でーもなぁ…。

「手作りのプレゼント。って感じでもないし…」
 
 付き合っているのなら手作りでも問題ないかもしれない。
恋愛的なことは経験の少ないわたしには良く分からないけれど、その…気に入られてる方だとは、思う。
 けど、休日にこうやって誘ったり誘われたりして色々な所におでかけしていてもわたしの休日の予定ほとんどが設楽先輩の名前で埋め尽くされていても
わたしは一度も設楽先輩から『そういう意味』での誘い方をされたことも言葉を貰ったことさえなくて
わたし達の関係は『恋人同士』ではなく単に『仲の良い先輩と後輩』でしかない。
 
 わたしは…正直に言っちゃうと先輩のことが好き。先輩後輩って意味じゃなく、好き。
 怒りっぽいし意地悪だし捻くれちゃってるし文句ばっかり言うし、ホントどうしてこの人を好きになっちゃったんだろう?って不思議に思うけど

「オマケに口もすごーっく悪いし待ち合わせ時間守ってくれないし…」

 良いことより悪いことの方がたくさん思いついちゃうのに、わたしは何故か設楽先輩のことが好きだ。
 でもまあ、なんだかんだ言って優しいし、ピアノを弾く姿も格好良かったりするし、何て言うかな、恋に理由は無いって言うか…

「まぁ『何とかの弱み』ってヤツな…ね。ってヤダもう何言ってるんだろ」

「…ハァ?何の弱みだよ」
「え?うわっ!せ、せ、せんぱいっ!!」

 ふふっ。って、自分で自分の言葉に照れ笑いしていると背後からいきなり慣れた、というか待ち人の声が吐く息も聞こえそうな程近くから聞こえてきて
瞬間わたしは変な声をあげ、得体の知れない寒気に身体をぶるっと震わせた。

「お…はようございます、設楽先輩。いつからそこに?」

 恐る恐る振り返ると案の定すぐ後ろに先輩の不機嫌そうな顔があって、その顔を見た途端、わたしは再び変な声がでそうになったけれど
それを必死に抑えて気を抜くと引き攣りそうになる顔に気合をいれ、ニッコリと微笑んだ。

「いつから?そうだな『ああもうどうしよう』ぐらいからだな」
「へ、へぇ。それって思いっきり最初の方ですよね」
「おまえがそう言うのならそうなのかもな」
「……。あの、どうして声をかけてくれなかったのでしょう?」
「かけただろ、今」
「いえ、今じゃなく…来て直ぐに。という意味なんですけど」
「ああ、何やら変な顔をしながらぶつぶつ呟いているから儀式の最中なのかと。邪魔するのも悪いと思って声をかけるのを遠慮していたんだが…」

─声、かけた方が良かったのか?

 ニヤリ。って音がしちゃうんじゃないかってぐらいに綺麗に唇を歪ませて微笑む設楽先輩の姿に
堪えきれず笑顔を作っていたわたしの頬がヒクリと引き攣る。
 怖い、この笑顔凄く怖い。
 そう思った時にはわたしは自覚ないまま半歩後図さり、勢いよく頭を下げていた。

「め、めっそうもないっ!お気遣い、心に染みますっ」
「…ふんっ」

 地面をじっと見つめながら思う。
 ああ、わたしってばどうして先輩の気配に気が付かなかったんだろう?って。
 独り言、ほとんど全部聞かれちゃってるよ……。

 後悔先に立たず。
 毎回ことが起こってから思い出すこの言葉を今日もこのタイミングで思い出してガックリと肩を落す。
 ナイショに、全部ナイショで進めたかったのに…プレゼントしようと思ってたことも、未だにそれを用意できてないことも、バレちゃったよね。
 困ったなあ、機嫌損ねちゃったかなぁ?そう思いながらコッソリ盗み見た先輩は案の定不機嫌そうで、ますます困ってしまう。

 ここはいっそ、ご機嫌伺いついでに何が欲しいか本人に尋ねてみるべき?って、一瞬考えてみたけれど
きっと「自分で考えろ」って言われちゃうんだろうな、とそんな場面をリアルに想像して苦笑する。

「あの…ですね、先輩」
「無駄なんだよ、おまえ」
「…へ?」

 え?なにが??
 今までの会話と全く繋がらない先輩の言葉にわけが全く分からなくて、ぽかんと口を開け、とんでもなく間抜けな顔(多分)で設楽先輩を見上ると
じっと睨みつけるような、でもちょっと拗ねてるような、よく分からない顔をした先輩と目があった。

「なんて顔してるんだよ」
「いや…だって先輩が分からないことを言うから」
「分からない?何で分からないんだよ」
「…この流れでどうやって分かれって言うんですか?」

 わたしエスパーじゃないんですけど?なんてついつい言ってしまったら、案の定設楽先輩はますます口を尖らせてしまった。
 ああ、何してるのわたし。さっき後悔について反省したばかりなのにって自分の学習能力の無さと間抜けさに呆れていると
何故だか先輩はそんなわたしに嫌味を言うことも怒ることもなく優しくぽんっと頭に手をのせ、ゆっくりと撫でてくれた。

「先輩?」
「なんでもいいんだよ。別に、……おまえがくれるものなら」
「・・・・え?」
 
 突然聞こえてきた先輩の言葉。声は変わらずぶっきらぼうで口も拗ねたように尖ってるのに、わたしの目の前にいる先輩の顔は
さっきとは全然違って…真っ赤だ。

「あの、先輩、今…」
「なんだよ、何も言ってないからな」
「で、でも今…」

─凄く嬉しいことを言ってくれてたような…。

「うるさいっ」

 言いかけた言葉を封じるように怒ったような声をだしてフンッって先輩はそっぽを向いてしまったけれど
でもね先輩、横を向いた先輩の耳も真っ赤になってるよ。

─でも、ちょっと残念だったな。

 先輩の声は掠れるぐらいに小さくて肝心な所がよく聞こえなかった。
 だけどどうしよう、それでもわたし、凄く凄く嬉しいかもしれない。

「ふふっ」
「…なんで笑うんだよ」
「え?笑ってますか?わたし」
「笑ってる、腹が立つから今すぐ引っ込めろ」
「ええええ!?」

 それは流石に無理ですよ、っていうか横暴です意地悪です。
そんなことを口を尖らせて言ってたら凄くムッとした顔をされておでこを弾かれてしまった。
 でも不思議とおでこは全然痛くないし、わたしのおでこを弾いた先輩の手は、何故だか元へ戻らずそのままゆっくりと下へ降りて
そこにあったわたしの手をぎゅっと、ちょっぴり強く、だけど優しく握りしめた。

「…さっさと行くぞ。トロイんだよ、おまえ」
「は、はい」
 
 あれ、先輩。言ってることとやっていることが違ってますよ?
つい意地悪で言ってしまいたくなる余計な言葉をぐっと飲み込んで、繋がれた手に目線を落す。
と、そこには大きくて優しい、綺麗で大好きな人の手があった。

「設楽先輩、あのね」
「ん?」
「…なんでもないです」
「なんだよ、それ」

 いつも通り不機嫌そうな声だけど、振り返った顔が、わたしを見る瞳が優しいから
ちょっとだけわたし、自惚れちゃってもいいのかなぁ?なんて勘違いしそうになってしまいそうになる。

「期待しないで待っててくださいね」
「ああ、分かってる、最初から期待してない」
「……。先輩すこしは社交辞令を覚えたほうがいいと思います」
「そういう言葉を期待しているのか?残念だったな、そういうのは必要な場所でしか使わない」
「今は必要じゃないって言うことですか?」

「必要無いだろ、おまえに。気の置けない相手だって言ってるんだよ」

 売り言葉に買い言葉。後悔するより先にむっとして頬を膨らませたら、ニッと笑った先輩に「ばーか」とまたおでこを弾かれてしまった。

「…もう」
「なんだよ。痛くないだろ、さっきより弱いんだから」

 言われたこととか先輩の笑顔にとても照れてしまったのでそれを誤魔化すように
わざと拗ねた感じで呟いてみたけれど

「あ、おまえっ!」

 先輩よりも赤くなってしまった顔はどうしても誤魔化しきれなくて
わたしは勢いよく先輩の一歩前へ踏み出すと繋いだ手が離れないよう、強引に指を絡めてずんずん歩いた。




2012.2.14
間に合った…のだろうか。1年ちょっとぶりのSSでした。ありがとう

 

拍手

約束しようよ

「俺、オマエの為ならいつだって、なんだってするよ?」

 昔は、それこそウインクの一つも飛ばしながら軽い気持ちで言えたのに
どういうわけか最近は、それが喉の奥でつっかかってなかなかでてこなかったりする。

 けどそれは決して嫌いになったからとかそういう意味じゃなく
今だってオマエの為ならいつだってなんだってできるって胸を張って言えるけど

 ただあの頃とは違って
言葉に本気が篭っているから、簡単に言えなくなってしまっただけなんだ。

 時々、彼女のちょっとした仕草や言葉に気持ちが溢れてたまらなくなって
試すように本気の言葉を囁いてみては、すぐに「なんちて」だとか「てへっ」だとか
一番知りたいことを知る前に、誤魔化す言葉を付け足しては笑ってしまう。

 それがめちゃくちゃ情けなくて

 「・・・ハァ」

 気がつけば深呼吸みたいな息を吐いているんだ。
 ホント情けねぇな、俺

 今まではさ、いらないって思ってた感情だった。
 何にも執着したくないし、これからもしないつもりでいたのに
気がつけばこんなに、気持ちが知らないうちに俺の全部を飲み込んでしまうぐらいに大きくなっていて
いっそ突き放してしまえば楽になれるかな?なんて
昔だったら簡単にできたことを、ほんのちょっとでも想像するだけで
息ができないぐらいに胸が締め付けられて、張り裂けそうになってしまう。

 あのさ、俺はね?今、スゲェ幸せ。それは本当

 全然思い通りにならない感情や
 オマエに触れる度に感じる、不思議な感覚や
 幸せだって思う度にやってくる恐怖感が
 ごちゃごちゃ混ざって、持て余して戸惑ったりするけど

 オマエがいてくれるだけで
胸が凄くドキドキして、幸せだって思うんだ。


 「ん?どうしたの?琉夏くん」
 「え?ああ、うん。なんでもないよ」

 心の中の呟きが聞こえてしまったのか
それとも単に俺がじっと見つめていたことに気づいただけなのか
隣を歩いていたオマエが不思議そうに俺を見上げて「大丈夫?」と首を傾げる。

 「あ、今のスゲェ可愛い。ね、もう一回やって?」
 「もうっ!」

 ついつい反射的にいつもの言葉を吐き出して
 「琉夏くんのバカ」という台詞と同時に思いっきり口を尖らせプイッと明後日の方を向てしまったオマエの姿に
ヤバイ、と慌てて「ごめんね?」なんて両手を合わせて笑顔を作ってみせたけど

 今日のオマエはどういうわけだかいつもと違って意地悪で
チラッとこちらに目線を向けるとすぐ、さっきよりも更に口をツンと尖らせ向こうをむいてしまって
俺は、そこまでオマエの機嫌を損ねるようなこと言ったっけ?なんて自分の言葉を思い出して首を捻る。

 台詞はいつもと同じ、顔だってちゃんと笑えてた。なのになんでだろ?
 答えにたどり着かない言葉たちが頭の中をぐるぐる回って、眩暈がしそう。
 
 「えっと・・・ごめん?」

 何が悪かったのか、なんていくら考えてもやっぱり思いつかない。
 けれど彼女の機嫌が悪くなったのはどう考えても俺のせいみたいだから、と
小さく頭を下げて未だに明後日の方を向く彼女を見つめたら

 「・・・あれ」

 何故か肩が微妙に震えていて、そこで俺は初めてオマエが笑っていることに気がついた。

 「ひょっとして・・・笑ってる?」
 「えっ!?や、わ、笑ってひゃいよ!」
 「・・・。声、震えてるんだけど」
 「・・・・ごめんなさい」

 びっくりしちゃった?ごめんね?と俺を見上げて不安そうな顔をする姿に、スゲェびっくりしたよ、と頷きながら
安心したせいか、ついついいつもの悪戯心がムクムク湧いた俺は、さっきまでオマエがやってたようにわざと目線をずらす。

 「・・・なんで?」

 って、思いっきり口を尖らせ拗ねたよ、って感じで。 

 「だってさ、琉夏くんこっち見ながら変なこと考えてそうな顔してたんだもん」
 「えー、してないよ」
 「嘘だー、してたよ。凄く」
 「んー、そうかな?」

 俺の問いかけに、うんうん。と、激しく頷くオマエの姿に思わず笑って
それから、おかしいな?そういうのはちゃんと隠してるつもりなんだけど。って考える
 
 って、違う違う。

 俺、さっきは別にエッチなこと考えてなかったし。
 それどころか全く逆のこと考えてたじゃん。
 
 もしかして俺、真剣な時もエッチな妄想してるってコイツに思われてたりして。

 ・・・なんかヤダな、それ。

 あれ、でも待てよ?逆にエッチな妄想してる時ってどんな風に思われてるんだろ。
 案外「あれ、琉夏くん凄く真面目な顔してどうしたの?悩み事?」なんて言われるのかな。

 もしそうだったら・・・これからオマエの前で妄想し放題とか?

 うん、いいな、それ。
 よし、がんばれ俺。

 「あ、またおかしなこと考えてない?」
 「ん?いや?あー、まあ、ちょっとしてま・・・」
 「すん。は却下」
 「・・・。じゃぁしてました」
 「よろしい」

 え?いいの?それで。

 どう考えてもダメな方じゃん、普段だったら「もうっ!」って言うとこだろ。 
 俺の心の中の突っ込みに全く気づかず、満足そうに頷いてるオマエがめちゃくちゃ面白くて
とりあえず「ありがとう」と笑顔と一緒に頭を小さく下げて思う。
 この流れならひょっとして、堂々としてれば潔し!ってことで何でもオーケーしてもらえるとか?なんかさ、認めちゃえば大丈夫、みたいな感じだよね。
 まあどうせ、この状況じゃ笑っただけでもエッチだとか変だとかってオマエに言われるような気がするし、だったら少しぐらいいい目みたっていいよね。

 「・・・。あ、そうだ」
 「なに?」

 うんと小さく頷いて、ふと突然、何かを思いついたように空を見上げて声を出す。
 と、どうしたの?って言いながら、キョトンとした顔でオマエも同じように空を見上げて俺の目線を辿るから
俺は別に空には何もないんだけどね、って小さく笑いながら思いっきり油断している彼女の耳元に口を近づけた。
 
 「あのさ腕、組んで?欲しがってるんだ、オマエを」
 「うわっ!!って、え?えぇっ!!」

 あ、一応言い訳しておくと、別にエッチな気持ちでってワケじゃないから。

 そんな言い訳も一つ、付け足して。

 わざと耳元で囁いておいてなに言ってんだ、俺。って感じだけどさ

 そりゃ、青春真っ盛りの健全な男子なんだから邪な気持ちが全く無いなんてありえないし
許されるなら囁く以上のことだってしたいよ、俺は。どうせダメって言われるからやらないけど

 でもさ、いやらしい気持ちを抜きにしても俺、いつだってオマエと腕をぎゅって絡めて
俺達の間に隙間なんて見つからないぐらいにぴったりとくっつくきたいって思うんだ。

 「だめかな?」

 思いっきり怪しい、って顔で見上げるオマエをじっと見つめ、駄目押しとばかりに
首をちょっぴり傾げてねだるようにオマエの言う『断りきれない笑顔』でニッコリと笑う。

 「ぐっ・・・」
 「ダメ?」

 眉間にぎゅっとシワを寄せて苦い顔のオマエ。スゲェ面白い

 「ダメなの?」
 「ううっ・・・」

 めちゃくちゃ困ってる顔が面白くて、思わず噴出しそうになるのをぐっと堪えながら
寂しいな、と呟きつつ顔をゆっくりと近づけると
 
 「・・・どうなの?」
 「いや・・・でも、だって・・・」
 「・・・ちゅーするよ」
 「うっ・・・わかった!わかった!」

 すると、あとちょっとでおでこ同士がくっつきそうになる距離まできたところで
観念したように彼女が勢い良く頷いた。

 まあ、俺としてはこのままちゅーしても良かったんだけど?なんて言ったらまたエッチとか言われるんだろうな。
 でもこれは健全な証拠。
 だってさ、この距離まで近づいて何もしないってことの方がおかしいでしょ。

 まあ、どうせ健全だろうとなかろうとおあずけ状態なんだけど。

 ハァ・・・。

 「もうっ、琉夏くんズルイ」
 「いいじゃんこれぐらい、ね」
 「ね。じゃなーーい。あーもう、恥ずかしいのにっ!」
 「気にしないきにしない」
 「気にするってば~」

 真っ赤な顔を隠すように俯いて、ヤケ気味な声をだしながら
でもしっかり俺の腕を掴んでくれるオマエの態度に思わずニヤけてしまう。

 オマエさぁ、そんな顔するからついつい楽しくて悪戯したくなるんだってホント分かってないんだな。
 ま、でもそこがオマエのいいところだし、気がついて直されたら俺の楽しみ減っちゃうから黙ってるけど。

 なんて、本人が聞いたら絶対に怒りそうな理不尽な台詞を心の中で呟いて笑っていると
未だに顔を真っ赤に染めている彼女が突然顔をあげてちょっぴり大きな声をあげた。
 
 「あーもうっ、いいよ!!琉夏くんが笑ってくれるんだったらいいんだ」
 「え?」
 「琉夏くん時々寂しそうな顔してるからさ、凄く気になってたの。だから今みたいに琉夏くんが楽しいって笑ってくれるんなら
恥ずかしくても嬉しいなって思ったのっ!わかった?!」
 「わ・・・わかった」
 
 え?なにそれ。
 俺が楽しくて笑ったら、オマエも嬉しいってこと? 

 迫力に押されてうん、って頷いたところで自分の顔が赤くなってきていることに気づく。

 ああもうなんだコイツ、スゲェ可愛いんだけど。

 予想してなかった彼女の言葉に、思わず俺の腕を掴む手を思いっきり自分の方へ引き寄せ
周りなんかお構いなしに強く抱きしめたくなる衝動に駆られて慌てて頭を振る。
 俺としては場所なんて全然お構いなしだけど、こんなところでそんなことしたら流石にコイツも嫌がるだろうしね、だから我慢。
 
 ・・・うん、ちゃんと分かってるよ。
 俺達そんな関係じゃないから、例え二人っきりになったとしてもきっとそんなことさせてもらえない。
 無邪気な顔して「待て」されるのがいいとこなんだ。
 そのうちきっと・・・希望があることを信じてるから待てにも耐えられるけど、そろそろ我慢も限界にきそう、俺。

 「あっ、ねぇ琉夏くん、甘いの食べに行こうよ!」
 「甘い・・・。あー、うん、行こう」

 コッチの悩みも全く知らず、俺の方を見ながら暢気な声を出すオマエ。
 そんなオマエの顔をチラッと見ながら、少し気持ちの切り替え早くない?
と、小さく文句を呟いて、頬を膨らませながら「うん」と頷く。

 だって断る理由ないし。
 一緒にいられる時間が長くなるのは例え何もできなくったって嬉しいから。
 
 ・・・・。
 って、いい加減しつこい、俺。

 「よし、やった!じゃぁ琉夏くんのおごり!」
 「えっ?」

 なんて、半ば無理やりに自分を納得させ、さぁ!気持ちを切り替えていこう!と思ったところで
 さっきのお返しとばかりに彼女の口から恐ろしい台詞が聞こえてきて俺は一気に青ざめる。

 待って、ちょっとまって。えぇっと財布の中いくら入ってたっけ。
 紙でできたものって数えるほども無かったよな、茶色い硬貨はなんかたくさんはいってたけど。
 
 バイト代でるまであと・・・・・マズイ。これはマズイ
 昼飯全部アメちゃんにしてもかなりマズイ。

 「あーのさ、おごってあげたい気持ちはスゲェあるんだけど・・・俺、今月もかなりピンチで・・・」
 「じゃぁ、ツケといてあげます。利子高いよ?」
 「わーお。マジ?」
 「うん、マジマジ」

 意地悪そうな顔でニッと笑うオマエ。
 知ってる、こういう顔するときって、なんか変なこと考えてるんだ。

 とりあえず、お金じゃないにしてもとんでもない物はカンベン。
 
 なんてちょっぴりビビっていると、何故か彼女はほっぺたを赤くしながらニッコリと俺を見上げて

 「うん、でもね?お金じゃないから安心していいよ」
 「え?じゃあ何?」 
 「えっとね、今度の休み琉夏くんの1日をいただきます。ってことでオーケー?」

 あまり慣れてない感じのウィンク一つ投げて、今日一番の笑顔で微笑んだ。

  ああもう、突然何を言い出すんだよ。
  止まらなくなったらどうすんだ、コラ。

 理性のストッパーもブチ切れて、暴走しそうになる欲求を必死で抑え、赤くなった顔を隠すように急いで口に手をあてる。

 なんだこれヤベェ、もうムリ、抱きしめたい。けどそれもムリ・・・・。
 どうすんだよこれ、俺どうしたらいいんだよ・・・。

 俺を試すような破壊力満点の笑顔と言葉。
 コイツ、俺をこれ以上おかしくしてどうするんだよ。ああ、もう、ホントオマエには敵わない

 「よし、任せろ」
 「うん、任せたっ!」

 ありったけの理性で気持ちを抑えてなんとか頷いて、でも、せめてこれくらいは・・・と、組んだ腕が解けないようにぎゅっと力をこめる。

 「じゃ行こっか。ふふふふふっ」

 動揺で、不自然な動きをしてしまっている俺の隣で、鼻歌まじりの暢気な顔で歩くオマエ。

 そんな彼女を盗み見て
言っておくけど気持ちを抑えてられるのも今のうち。
俺をこんな風にした責任はちゃんと取ってもらうからね?なんてちょっぴり物騒なことを思いつつ
何故かこの、なんでもない幸せに泣きそうになってしまった。

 幸せで泣きそうなんて乙女か、俺

 そう、心の中で突っ込んで、単純な自分に苦笑いして。

 「・・・あのさ、美奈子」
 「ん?なに?琉夏くん」
 「あ、いや。やっぱなんでもない」
 「変なのっ」
 「まぁね~」
 「褒めてないよっ」
 
  俺、今はまだオマエを守れる自信も無いし、今を生きていくのに必死だけど
  いつか、もっともっと強くなって何もかも乗り越えられたら

 その時はサクラソウと一緒に

 あいしてる

 って伝えに行くから。

 なあ、美奈子。

 俺の心を重くする塊も消えることはないし、悲しいことだってこれからもあると思うけど

 俺はオマエを絶対幸せにするから
 オマエも俺を幸せにしてくれる?



 ・・・って、あ。


 ごめん。やっぱ訂正。
 



 俺はオマエがいてくれるだけで幸せ。
 だから、ずっと俺の傍にいて?







2010.09.17 アキラ28号

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